ハーフパイプ種目の競技説明 見所解説
どんなところに着目して観戦すればいい?
ハーフパイプとは文字通り、半円の筒状の形をしたアイテムの両サイドの壁を交互に使って、次々と空高く飛んではトリックを決めていく競技です。スタートするや否や豪快なトリックが次々繰り出されるので、見ていて華やかで非常に楽しいですが、以外とあっという間に演技は終わってしまいます。ここではハーフパイプ演技のどんなところに着目して観戦したらもっと大会が楽しくなるかをご紹介します。
①エアーの高さ
高さを「ヘッド」で計ろう
エアー(壁を抜け出しジャンプすること)の高さは、演技全体の完成度を計るのに欠かせない要素です。スノーボーダーの間では高さを表す基準として「ヘッドオーバー」という言葉を用います。「人の頭を越えるほどの高さ」という意味で、1ヘッドでも十分な高さですが、オリンピックではダブルやトリプルオーバーといった爆発的な高さも見られるでしょう。実際オリンピックでは6m飛ぶ選手もいます。テレビを見ながら高さを計る基準として、「人何人分飛んでいるか」を見ておくと楽しさも広がるでしょう。また、演技を通しての全体的な高さも見ておくことも大切です。なぜならハーフパイプは筒状のアイテムをトリックでどんどん繋いでいく競技。一発目で高さのあるエアや難易度の高いトリックを決めても、次以降の高さが出ないということは、着地を微妙にミスしていたり、次の壁へ向かうボトムターンが上手くできてなかったりするからです。スタートからゴールまで、高さを損なうこと無く安定してトリックを繰り出す選手が高得点を獲得できるでしょう。
②トリックの難易度
勝負のカギを握る大技、ダブルコークってそもそも何?
>オリンピックのハーフパイプ競技では、標準技となるグラブエアを入れつつ、横回転スピンや3Dスピン(コーク)を織り交ぜ全体のルーティーンを披露していきます。特にこの近年では、アメリカのショーンホワイトが2009年のNZオープンで、ハーフパイプコンテスト史上初となるダブルコークを成功させたことで、競技のレベルがネクストレベルに進化しました。そもそもコークとはコークスクリュー(栓抜き)のこと。踏み切りで頭を倒し込み、スピンの軸が文字通りらせん状にずれていきます。ダブルコークはスピンの途中でさらにもう一度頭を倒し込み、1080(3回転)や1260(3回転半)といった回転数に派生させていきます。スーパースタイリッシュなFSダブルコーク1080を繰り出した、國母和宏君のバンクーバー五輪での勇姿は記憶に新しいですが、今回の日本人出場選手のほとんどがすでにダブルコークを習得しています。ただ、つい先日の大会で、前大会覇者のショーンホワイトがフロントサイドダブルコーク1440を披露。頭を2度逆さに入れながら4回転スピンするという驚愕のトリックです。さらにショーンはオリンピック用にさらなるニュートリックを温めているらしく、もしかしたら人類初のハーフパイプでのトリプルコークを拝めるかも知れません。
③全体の完成度
一発のエアだけでなくトータルの完成度が求められる
①のエアーの高さでも触れましたが、オリンピックのハーフパイプ競技で勝つためには、トリック一つ一つのインパクトも大事ですが、それらを繋ぐ安定した演技が必要になってきます。高回転スピンやダブルコークは見ていて華やかで決まると得点も高いですが、踏み切りをミスして高さが出なかったり、着地で転ばずともバランスを崩して減速したりもします。ほんの些細なミスが、その後のエアの高さやトリックのキレに支障をきたし、減点の対象にもなります。難易度の高い技をいかに美しく、高く決められるか、そしていかにしてスピードを殺さず次のエアーへ繋げていくか、こうした競技全体のトータルの完成度も意識しながら観戦すると、楽しみも倍増するでしょう。
④スタイル
記録とともに記憶に残るスノーボードの真骨頂
スノーボードは個々のスタイルを自由に表現できる遊びです。グラブの形一つにしてもみんなスタイルが違うし、あえて人とは違うルーティーンでトリックを繋げたり、高回転より低回転スピンで自分を表現したり。世界各国から「勝つためのルーティーン」で勝負してくるオリンピックの舞台にも、こうしたスノーボード本来の持つかっこ良さ、スタイルを十分垣間見ることができるでしょう。得点は高くないけれど、「今の人のあのトリック超カッコいい」と、心に留まるスタイリッシュな演技を見つけるのも、オリンピックを楽しむ一つの方法でしょう。スタイルの感じ方はは人それぞれです。たとえ上位入賞していなくても、アナタだけのベストスタイル賞を決めてみるのもいいかも知れません。