ノーマルキャンバーとローキャンバー どう違うの??
キャンバーの高さ、強さで滑りはどう変わる?
キャンバーとは板を地面に置いたときの隙間のことで、「板の遊び」とも言えます。 キャンバーの高さには5,6mmある普通のタイプから、1,2mmといったかなり低いものまで様々です。 ここではキャンバーの高さ、強さが滑りにどう影響してくるのかを考察します。
そもそもキャンバーの特徴、メリットは?
当サイトの過去の記事「スノーボードを長さ、固さ、幅で選ぶ」や「ロッカー、ダブルキャンバーって何?」でも触れていますが、 スノーボードはターンにしろジャンプにしろ、ボードのしなりを利用して板をコントロールしています。
板に力をグッと加えたり、反対に板から力をスッと抜いたりして、各動作でのタイミングや強弱を図りながら、ターンで加速したり、オーリーで高さを出したりしています。
キャンバーがある板は、この板のしなりのメリハリをつけやすく、加重抜重によって得られるボードの反発力を引き出すことが出来ます。
ターン、ジャンプといった、スノーボードのごく基本的な動作を、伝統的かつ王道のスタイルで学ぶのに適したのがキャンバーボードです。
「キャンバー→ローキャンバー→フラット」の関係
それでは逆に、キャンバーがあることによる、強すぎることによる不都合は何なのでしょうか?
時としてキャンバーは、乗り手の体勢に関わらず作動してしまうことがあります。いわゆる「逆エッジ」が代表的な例です。
例えば「ジャンプの着地やターンで上半身のバランスを崩してしまい、立て直そうとしたら、いきなりエッジが掛かって吹っ飛んだ」という経験はありませんか?その原因のすべてがキャンバーのせい、ではないにしろ、少なからずキャンバーが意図せず悪い方向に働いてエッジが引っかかった、とも考えられます。
この意図せぬエッジングを防ぎやすいのが「フラットキャンバー(ゼロキャンバー)」です。これはキャンバーが一切無く、地面に奥とソールがピタッとつく構造です。もともとピタッとしてるので、逆エッジもあまり喰らわなそうですよね。
フラット構造は、ターンでエッジが入れやすく、抜けにくい。少ない力でも楽にジャンプでき、トリックのきっかけも掴みやすいのが特徴です 。
たとえばジャンプしてスピントリックを行うとします。キャンバーだったらまず上に飛ぶために、いわゆるオーリーの動作をしっかり行い、その上で先行動作も入れていきます。
フラットキャンバーの場合、このオーリーの動作に気を配らなくても、まくられないように体のポジションに気をつけながら下半身を引きつけていけば、少ない力できれいに飛ぶことが出来るので、その分トリックの動作に集中することが出来ます。
「フラットキャンバーは確かに乗りやすくてトリックもしやすい。だけどやっぱり板をしならせた反発力が欲しい」
そこでで出てくるのが、キャンバーの高さや強さを最大限に抑えたローキャンバーなのです。
「キャンバーの良さをできるだけ残したまま、フラット構造に歩み寄った。」
というのが当サイト管理人のローキャンバーボードに対する見解です。
スノーボードブランドの社長さんにも聞いてみました
自分だけの意見でもアレなんで、実際にキャンバーもローキャンバーも作っているボードブランド「HOLIDAY SNOWBOARD」の長谷川パンチ泰士 くんにも違いを訊ねてみました。
HOLIDAYの多くのモデルは、ノーズとテールに「FLAT BLEND ZONE」を設定し、ターンやトリックでの余計な引っかかりを軽減させています。
その中で、ローキャンバー、ノーマルキャンバーを始めとして、いくつかのキャンバー構造をチョイスできるラインナップになっています。
管理人「どうしてキャンバーとローキャンバーを分けて作ったの?」
パンチ君「んーー。例えばふつうの、キャンバーボードがあるじゃない?そのボード乗って、しばらく乗り続けると、いずれヘタッてくるじゃない。その「ヘタッたくらいの方がいい!」っていう人も、中にはいるから・・」
なるほど。
ジブのやりやすさ、トリックのしやすさを考えると、キャンバーがありすぎる板だと、人によっては難しくなってしまうし、でもフラットだと反発が無く物足りなくなってしまうので(HOLIDAYはフラットキャンバー構造を出していない)、それで高さ2mmのローキャンバーモデルを出したのだそう。
パウダーは??新潟のレジェンドにも聞いてみた
「パウダーも・・シンジがキャンバー低い方がいいって言ってたし・・」
とパンチ君。
何?それは聞き捨てならない!シンジとは佐藤慎二君のことで、新潟をベースに滑る、半端無く板に乗れた超実力派ライダーのこと。もはやレジェンドの領域です。
せっかくなのでシンジ君にもローキャンバーについて、電話して聞いてみました。
管理人「パンチくんに「シンジもローキャンバーがいいって言ってた」って聞いたんだけど、本当?」
シンジ「え??んー・・確かにパウダーで一枚上に行けるんだよなー」
北海道に頻繁に行きはじめた数年前。当時シンジはBURTONのがっちりキャンバーの入ったモデルで滑っていたんだそう。
ある時、五明アツシ君にGENTEMSTICKのキャンバー1mmの板を借りて滑ってみたところ、この「パウダーライド中にボードが一枚上に行く」感覚を覚えたそうで、それ以来、気付けばローキャンバーのモデルを多く乗るようになったそうです。
パウダーライドに関して言えば、キャンバーよりローキャンバー、さらにはフラットの方が浮力を得やすいが、フラットだと反発が物足りないのでローキャンバーというのがシンジの考え。もちろんキャンバー構造以外にもスノーボードには形状など、いろいろな特徴や持ち味があるので、常にシンジがローキャンバーを乗り続けているという訳ではありませんが。
結局のところ
キャンバーボードは、足下に遊びがあることで、スノーボードの様々な基本動作を1からしっかりと味わえる。加重抜重のタイミングを上手く取れれば、板からの反発を最大限味わえ、非常に乗り応え、踏み応えがある。
ただし「トリックのしやすさ」、「パウダーでの浮力」、「初心者が乗る板」を考えると、時にキャンバーがあることで難しい場合もあるので、キャンバーのメリットを出来るだけ残しながらも操作性を向上させた「ローキャンバーボード」というモデルがある。
もしもあなたがキャンバーボードの購入を考えているのなら、ご自身の技量、打ち込んでいるジャンル、感じたいフィーリングなどと照らし合わせて、キャンバーの高さを選んでみてはいかがでしょうか。