上手くなるにはどうしたらいい?
段取り8割、滑り2割
滑るまでの準備が大事だったりする。
スノーボードは楽しい! もっともっと上手くなりたい!打ち込めば打ち込むほど、もっともっと上手になりたくなる。どうすれば上手くなるんだろう?シリーズ第二弾は「段取り8割滑り2割」という格言を管理人のエピソードも交えてご紹介します。
段取り8割、滑り2割
「段取りなんていらんよ。滑ってなんぼ!とにかく何も考えずに無我夢中で滑ってりゃぁ上手くなるでしょ!」
サイト管理人も20代の時はそう思っていました。とにかく滑るだけ滑る!できない技も100回練習すればできるようになるだろうし、数と量をこなせば結果的に技術もついてくる。これは間違いありません。
ただ忘れていけないことは、スノーボードは自然が相手の遊びだということ。特にフリーランしたり、パウダーライドを求める人にとっては、当たり前のことを当たり前のようにこなす上で、この「段取り8割滑り2割」という格言が大切になってくることを、過去に行った北海道トリップで自分は教わりました。
マイナス30℃のTHE DAYの日に学んだこと
今から6シーズン前のことでした。ちょうど自分が30になる手前の冬。
この年になるまで自分は「ヤングガンズフィルム」というスノーボードムービーで自分のパートを取ることに必死で、シーズンの大半をフィルミングに費やしていました。パークでトリックを決めたり、ストリートレールを攻めたり、バックカントリーにキッカーを作ってはスピンしたり。
今思うとこの頃は「自分がどれだけイケてる滑りをするか」それを形に残したくて没頭していたんだと思います。
なんとか4シーズン連続でフルパートを残すことができましたが、同時に撮影ばっかりしていて根本的な自分のライディングレベルがあまり伸びていないことにうすうす気付きだしていました。
その頃は、毎年本格的なフィルミングが始まる前に、一ヶ月は北海道でパウダーを滑りながら体を慣らしていこうと決めていました。だいたい12月から年明けくらいまで札幌やニセコに滞在し、ひゃっほいと楽しんだ後に海外に撮影にいく、そんなルーティーンでした。時が経つにつれこの「北海道足慣らし」がどうも楽しくなり、加えて今後もっとハイレベルな滑りをするためには、雪山のことをもっと学んでいかないと無理だなと痛烈に感じてきたのです。
それで自分は29歳の冬、撮影をメインに動くのではなく、車中泊しながら1シーズン北海道で過ごそうと決めました。
ただし一人ではどうにもこうにもいかない。するとヤングガンズの撮影でもお世話になっていたカメラマンHI-SEEさんが北海道に来ているらしく、連絡をとって一緒に滑らせてもらおうと考えました。
ちょうどHI-SEEさんはカメラマンのオカケンと一緒に「雪めぐり」というムービーの撮影をしていて道北方面にトリップに向かうらしく、運良くタイミングよく、そのクルーに混ぜてもらうことになりました。そこには大江信行君や、天海洋君、森山俊幸君など、当サイトでもお世話になってるライダーもいて、行動はもちろん、車泊でした。
車泊で1シーズン過ごそうとしていた僕の車の中は、荷物でごった返していました。そもそも車泊なんてほとんどしたことがありませんでした。
「車泊=車の中に部屋がある」と考えていた当初の車内は、今思うといらないものだらけ。全く着ない衣類や、そんなにたくさんいらないスノーボード道具、おまけに衣類をしまう衣装ケースまで。この撮影トリップの目的はあくまで、いい滑りをして楽しんで、いい映像と写真を残すこと。車内で自分の部屋のようにくつろぐことではありません。そんなことすらよく分かっていませんでした。
トリップは自分が想像していた以上のものでした。まずはその寒さ。旭川よりさらに北の、日本海側に位置するスポットは日本で最低気温を記録した町としても有名で、そのトリップ中に2度もマイナス30度を記録したほどでした。
そんな極寒のエリア周辺で、車で寝泊まりしながら、朝イチで、いいポイントを滑る。天気や斜面の向きを見ながら、雪質のいい面、日のあたる時間を考え、滑る場所を時間ごとに変えてシューティングしていく。
それまでの自分は、天気というより、自分の都合で撮影の計画を練っていました。
あそこらへんにキッカーを作って、やりたい技をやる。この前はフロント720をしたから、今度はスイッチバックサイドのスピンがしたい。どっかでできる地形ないかなー
今回は違います。太陽の位置を考え、時間ごとにポイントを変えていく。雪質がありえないほど良く、天気もよくて、何週間に一度しか現れない、文字通りのTHE DAY。そんな一期一会のコンディションで要求されるのは、前日までの下準備と入念な計画、いわゆる「段取り」でした。
まず朝起きてから支度するまでの、自分とクルーの動きの速さにも衝撃を受けました。朝起きてから準備して、ブーツを履いている頃にはみんなスノーシューを履いてさっさとハイクし始めている。もちろん彼らの行動が早いというのもありましたが、自分の動きが遅すぎると言うのも明白でした。多分それは、前の日の晩から準備も含めて、今日という日をイメージできていなかったから。
段取りが遅いと、行動のすべてが後手に回ります。何が後手に回るか、何よりも自分の滑るラインが後手に回ります。どうしようみんなもう滑るところ決まってる、俺はどこ滑ろう。その頃にはみんな、次に滑るところを考えています。
これはものすごく極端な例えだと思います。他のみんなは経験豊富な一流のフリーライダー。自分はジャンプばかりしていたパーク寄りの経験浅い人間。
前年度にヤングガンズフィルムでラストパートを取ったにも関わらず、4,5日続いたこのトリップでは自分はわずか1カットしか映像を残せませんでした。
もちろん経験値の差もあります。ただそれ以上に、スノーボードに対する心構えの差が歴然でした。
スノーボードをしていてこんなに悔しい時はありませんでした。旅の途中でぼそっとHI-SEEさんが「段取り8割、滑り2割だから」とつぶやいたのを今でも忘れません。
「その日のことを前日までにできるだけイメージして、段取りを済ませておく。」
自分が身をもって体験したこの上手くなる秘訣は、フリーランやパウダーライドに限らず、多分スノーボードの色々な場面で役立つと思います。
大会に出たり、新しいトリックをパークで覚えたりするにも、前日からの準備やイメトレを続けることで、時に飛躍的な進化を遂げることができるはずです。
当たり前のことを当たり前にやる。これを継続できれば新たな道が開け、スノーボードがもっと楽しくなるかもしれません。