上手くなるにはどうしたらいい?
③ 視野を広げて遊ぶ
基本を反復練習すれば、遊び方の幅が広がる
上手くなるための、スノーボードに対する向き合い方を考えていく、すっかり忘れ去られていたシリーズの第3弾は「視野を広げて遊ぶ」。
この「視野を広げる」には、気持ち的なものと、技術的なものの二つの意味合いを含んでいると思います。スノーボードに大切な「幅広い視野で物事を見ること」いわゆうる「遊び心」と、そのために必要な「基本スキルの向上」の大切さを、サイト管理人のかつての経験談からご紹介させて頂きます。
追憶のレイクタホ・岩セッション
今から9年前。自分は「ヤングガンズフィルム」というムービーの撮影で、アメリカのレイクタホに2ヶ月間の遠征に行っていました。NORTH STAR AT TAHOEというゲレンデをベースに、タホ近郊のストリートレールやバックカントリーを攻めながら、自分のビデオパートに使うフッテージを貯めることを目的に、日々滑り倒す毎日を送っていました。
滞在して約一ヶ月が過ぎたとある日、ハイウェイから撮影できそうな斜面が見えたので、車を停めて近くまで行ってみることに。道路脇を30分程歩くと斜面が開けてきて、メンバー数人がハイクアップをして、フリーライドの撮影に挑みました。
待っているメンバーは周囲を散策すると、何やら巨大な岩を発見しました。
「何かBOXっぽく見える」と、岩の上の雪をそぎ落とし、リップを作りランディングも作って、半ば強引にその岩をBOXに見立てていざトライしてみました。
遊び半分で作ったつもりが、実際トライしてみると岩の上からランディングが何も見えず、めちゃくちゃ難しい!それでも僕らは何とかみんな、ムービーに使える映像を残しました
その一方で、当サイトにも時おり出演してもらっている佐藤慎二は、そんな僕らを横目に、斜面上部にある別の岩にリップを付け出しました。僕らが大掛かりにアイテムを作っている間、慎二は瞬く間にアイテムを完成させ、その岩をウォールライド。それが冒頭の写真です。
周りに流されずに広い視野で周囲を探索していたシンジは、自分だけのオリジナリティあるカットを残しました。
スノーボードでとても大切なのは遊び心、発想力。視野を広げて周囲を見渡し、「何か楽しめるものはないかな」と勘ぐる好奇心だと思います。
もう一つ言うならば、他のメンバーは別として、少なくとも当時の自分は、慎二のように、アイテムをハーフパイプっぽく、3Dの動きでヒットするという考えが全くありませんでした。今となっては多くのムービーでそういうジビングを数多く見られますけどね。
その当時、いつも自分が頭に描いていた遊びは、ジブ系だったら「アイテムに登って降りる」か「アイテムをコスる」といった、いわゆる上下方向の動きのみ。ジャンプにしても、「キッカーを作って上に飛ぶ」か「クリフを探して落ちる」これまた縦のみの動き。
その時の自分に遊び心や好奇心が無かった訳ではないけれど、残念ながらシンジのように、アイテムを3Dで捉える「技術的な視野」を持っていませんでした。
どれだけ発想力を駆使しても、滑りのスキルそのものが備わっていなければ、遊び方に限界が見えてくる。というより遊び方を思いつくことが出来ないんですね。
でもそれは単に「めちゃくちゃ上手くなれ」という話だけではなく、ごく基本的な技術を身に付けていけば、視野も自然と広がってくることを後々感じました。
話をさらに進めてみます。
時は瞬く間に過ぎ去り、ヤングガンズフィルムも残念ながら終わりを迎え、その後自分はパウダーライドの魅力にハマりだして、北海道ニセコをベースに滑ることに。
そこで前回の記事「段取り8割、滑り2割」でもご紹介した、マイナス30℃の車中泊トリップで、かつてない苦い思いを味わうことに。
その時の自分の段取りが足りなかったことと、スキルの無さも加わって、ドン深の北海道の本気のパウダーでは、自分の滑りが全く通用しなかったのです。
縦方向、上下方向の視野だけの、ジャンプメインの滑りばかりしていた自分に足りていなかったのは、ズバリ3Dの目線いわゆるカービングターンでした。
パウダーで飛べる地形を見つけても、ターンが出来なければ横移動が出来ず、行きたいとこに行くことすら出来ない。前回も書きましたが、一週間続いたこのトリップで自分は、わずか1カットしか画を残せなかった。涙が出る程悔しくて、それ以来撮影そっちのけで、ゲレンデの圧雪バーンでカービングターンばっかり練習するようになりました。
そうして3シーズン4シーズンと過ぎ、今では何とかそれなりに?カービングターンも出来るようになり、フリーライドでも、上下方向だけでなく、横へも行けるようになってきました。ちょっとずつ技術的な3Dの視野も持てるようになってきました。そうすると、今まで気付きもしなかった地形にも目が行くようになってきたんですね。
例えばマッシュを見つけても今までは、「まっすぐアプローチして上に乗って落ちる」しか考えられなかったのが、最近では「横からアプローチしたら結構上に飛べるんじゃないだろうか」とか「パウダーがいい感じで上がるんじゃないか」とか、別の視点から地形を見られるようになってきたのです。
誰でも出来る、基本的な反復練習を継続すれば、気持ち的な視野と技術的な視野が合わさって、もっと遊べるようになる。そう思いました。まだまだ全然未熟ですけど。
もし今またもう一度、レイクタホのあのロックガーデンに行けるのなら、多分慎二が遊んでいたような、3Dの遊びがもっと出来るかもしれないし、あそこの場所でなくても、もう少し広い視野でアイテムを見つけられるんじゃないかなーなんて、パソコンに入っていた9年前の慎二のウォールライドを見ながらそう感じています。
「上達すれば道が開け、スノーボードがもっと楽しくなる!」
ということなんですね!